マイルドにんにく

元祖とも言うべきニンニク生産日本一の田子町の前に、実際の生産量日本一である十和田市はやや影が薄くなってしまった。むしろ、独自の展開を図ることによって、田子町とともに注目されているのが天間林村かもしれない。

JA東北天間(天間林村農協) では増え始めた中国産ニンニクに対抗しようと、1991年に3億円ものお金をかけて、通年出荷できるガス貯蔵倉庫を設置。翌93年には、特別な真空処理を施し、食後に匂いがほとんど残らないニンニクを開発した。
それが「MILD229(マイルドニンニク)」である。

田子町ほどの種類はないが、「しよう油漬にんにく」のほか、「にんにく鶏みそ」、卵黄と混ぜた粉末の「黄金」などマイルドニンニクを使ったユニークな加工品をつくつている。もともと天間林村農協がマイルドニンニ クを手がけるようになったのは、仙台の健康食品研究家・阿部氏が天間林村農協を訪ねたのがきっかけになった。

天間林村は夏はヤマセ(山背風) が吹く冷涼地帯という厳しい気象条件と、減反による水田の減少を逆手に取って、稲作からニンニクの栽培に力を注いできた。しかし、安い中国産が出回り始めると、売上げが低迷。

天間林村のニンニクが中国産に対抗し、市場で生き残っていくには、ほかとちがう何か特徴が欲しいと悩んでいた。そこに現れたのが、健康食品研究家であった。彼は塩のアク抜きの話を持ち出して、この塩のアク抜き機械にニンニクを入れて処理すると、食後の匂いが残らないニンニクになるというのである。「確かにニンニクが嫌われる一番の理由は匂いである。もし、女性や営業マン、匂いの気になる人や苦手な人でも食べられるニンニクができれば、これは売り物になる」というのである

ニンニクの将来を考えれば、天間林村独自の付加価値がどうしても必要であったからだ。マイルドニンニクは、円錐を上下合わせたような高さ180cmほどのステンレス製タンクにニンニクを入れて、一瞬の真空処理を施すことで、風味は普通のニンニクと変わらないが、昧はややまろやかになる。

肝心の食後はどうか。実験のために、家族には黙って、毎日、このニンニクを食べて帰宅した。彼は刺身にすり下ろしたニンニクをつけて食べるほどのニンニク好きだが、家族は食べた後の匂いが嫌だといって、いつもは逃げ回る。その家族が逃げ回らなかった。

それで自信を得た彼に、農協の婦人部が協力。処理ニンニクと普通のニンニクを食べた5人ずつを、口臭測定器にかけるという実験を実施。結果は測定するまでもなかった。

こうしてできあがったのがマイルドニンニクであった。自らセールスに出て、マイルドニンニクの良さを説明して歩いた。初めは半信半疑だった問屋や老舗のレストランが興味を示し、やがて扱ってくれるようになった。いまでは、中国産のニンニクと並んで、ちょっとしたスーパーには置いてある。加工品の中では「しょう油漬にんにく」と「にんにくスライス」が好評ということだが、特に生産地でとれたてのニンニクを特殊な漬け方で作る「しょう抽漬にんにく」は、2年ほど寝かせることもあって、品不足になってしまった。

天間林村農協で開催した「1997年産ニンニク出荷講習会」では、「ニンニクが病原性大腸菌0o-157を退治する」と題する講演を行い、ニンニクの抗菌作用に関する興味深い実験結果を紹介している。こうした一連の情報天間林村ではニンニクおよびマイルドニンニクに関する積極的なPRと情報提供を行っている。

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